ハズ、カム。

週末にお芝居を観て来たよ。という事で感想をば。長いよ。
そしてネタバレをしているよ。


TEAM NACS 第13回公演
下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム。

2009年4月12日(日)
13:00開演
電力ホール


駄作だろうが名作だろうが「片親、兄弟愛」モノには無条件で号泣する私がまんまと号泣。しかし面白かったかといわれると、うーん。前半のお見合いや婚約者紹介云々のくだりは必要だったのかしら。とにかく最初に笑わせて後半泣かせてやっぜ!っていうのがひしひし伝わってきて多少鼻白みました。ちょっとした悪戯心から巻き起こる人違い勘違いドタバタも、家出して戻ってきた兄弟が極道の道にどっぷりつかって命を狙われている設定も、5人兄弟の中で血のつながりの無いものがいる事も、ありがちっちゃあありがち。そのありがちの設定をどういう風に面白く調理するかが作家演出家の腕の見せ所なんだとは思うのだけれど、残念ながらそれが全体的に中途半端なところで頭打ちになってしまっている印象でした。大忙しの大泉洋大先生が作演出を担当されたという事で、その忙しさも考慮したうえで評価しないといけないのかもしれないけど、ていうか、こんな風に書いたら怒られるんだろうけど、はっきり言って観てる人間には、作っている人間の状況なんてこれっぽっちも関係なくて、ステージ上で見せてもらったものが全てなのです。「忙しいのによく頑張ったね。」とか、「時間が無かった割には上出来!」なんていう感想は、逆に作った人に対して失礼だと思うのです。作演出のプロじゃないから多少は仕方ないのかな、でも。うーん。
あと、私はどうもナックスさんの芝居で出てくる「女装」が受け付けないのです。こんな事言ったらほとんどの作品が駄目だろうという気もしますが、なんだろうかね。5人だけでやるんだったら何も女性を入れなくていいんじゃないかしら。男性5人の芝居だと色々限られしまって大変なのかしらね。大変なんだろうね。あと、そろそろ外部から作演出の人を呼んで公演してみるっていうのはどうなんでしょうか。役者としては5人ともとってもキラキラしてましたもの。しげの末っ子っぷりとか、大泉さんの引きこもり変人っぷりとか、ヤスケンの心の葛藤とか、音尾くんの抱えた悲しみとか、リーダーの兄弟思いな所とか、一人ひとりがとってもまっすぐで、小手先芝居じゃない感じが伝わってきたもの。
「山田家の人々」や「さよなら朝日荘」が大好きなので、大泉作品はとても馴染みやすくて大好きなはずなんだけど、それゆえに観る前から無意識にハードル上げちゃっていたのかもしれません。だからって一ミリも表情変えずに2時間過ごした訳じゃ勿論なくて、言葉の端々で笑わせてもらったりなんだりちゃんとしましたよ。あんまりにもストレートな「たーのしいでしょー!」っていう笑いのパートが多かったのかな。こればっかりはね、個人の嗜好の問題だからどうしようもないのですよね。誰が悪いわけでもなく、ただ単にその作品と自分が合わなかった不幸、それだけです。どんなに好きな人が作ろうが出てようが、実際観てみないと心底楽しめるかどうか分からない、これが芝居を観る面白さでもあるのだとは思うのだけどねぇ。
あと余談を2つほど。いい加減慣れないといけないと思いつつも、毎度お馴染みお約束のスタオベと、カーテンコールの挨拶での「これまでは壮大なリハで、本番は札幌です。札幌で全力を出します」的な話とか、何年経ってもいまだに慣れないなぁ。なにもそこまで正直に言わなくても。
あ、余談をもう一つ。カーテンコールの挨拶で大泉さんが、「本当はもっと先まで脚本を書いていたのだけど、あれで終わるのが一番すっきりしてていいね、って話になったので、あすこで終わりにしましたがご安心下さい。全員見事にハッピーエンドです!」と仰ってましたので、みんな色々あってちゃんと幸せなところにおさまるみたいですよ。

という事で、少々残念さが残りつつも、やっぱり地元で好きな劇団の公演を観る事が出来る幸せを噛み締めておったのでした。